2020年02月25日 (火) 22:21 | 編集
政府は本日(25日)、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、国民がとるべき行動などを盛り込んだ対策の「基本方針」を決定しました。
内容的には「今までよく言われていたこと」なので、特に目新しさはありません。「この程度の内容ならもう少し早く出せたのでは?」というのは、多くの人が抱く感想だと思います。
しかしながら、国がこのような基本方針を打ち出すことによって、各種団体が大規模集会を自粛しやすくなるので、一定の意義があるでしょう。
実際に、藤沢市歯科医師会でも、この「基本方針」を受けて、明後日(27日)に予定されていた施設訪問健診・訪問口腔衛生指導スタッフによる全体ミーティング(40人規模)と、その後の懇親会(25人規模)の中止が決まりました。
さて、現時点での感染者数は、世界全体ではその増加傾向に鈍化が見られます。
ただし、これは既に大規模感染が起こっていた中国での鈍化が反映されているので、中国以外の国と地域では「まさにこれから」感染拡大が起こっていくものと思われます。
もちろん、この新型コロナウイルスに感染しても、その多くが軽症で済むことから、実際の感染者数は「この10倍いても不思議じゃない」ということは常に頭に置いておく必要があります。

ちょうど1ヶ月前の1月26日、当ブログでも、パンデミック対策の基本は、「流行のピークを遅らせること」と「流行のピークを低くすること」だと記しました。
中国共産党は、1月23日から武漢を出発して市外に向かう航空機と列車の運行を休止し、バスや地下鉄など市内の公共交通機関も運行を取りやめ、事実上の「封鎖」に踏み切りました。
さらに中国国内の団体旅行は1月24日から、国外への団体旅行(パッケージツアーも含む)も27日から中止になり、それを受けて日本国内の中国人旅行者は激減しています。
これにより、国外への感染流出のピークを遅らせ、ピークを低くすることには一定の効果がありました。(武漢市当局による隠蔽さえなければ、もっと早くこの施策を打てたのに、、、という悔しさはありますが。)
これからは、中国以外の各国が「流行のピークを遅らせ」、「流行のピークを低くする」ための施策を打たなければなりません。
そのための今般の「基本方針」なのですが、「もう少し早く発表できなかったのか」という思いとともに、新型コロナウイルス自体が未だ完全には解明されていないので、どうしても不安が残るところです。

(図は関西福祉大学 勝田吉彰研究室のHPより)
ところで、新型ウイルスに対する封じ込めのために、社会活動・経済活動をどこまで制限すれば良いのか?、というのは常に議論されるところです。
まず、「経済状態が悪くなると自殺が増える」、これは厳然たる事実です。
バブル崩壊後に訪れた就職氷河期や、リーマンショック後などの経済低迷期は、バブル崩壊前や現在などと比べて、自殺者数は年間で1万人以上も多いのです。

日本では、毎年1万人が季節性インフルエンザで死亡していますが、それ以上の人数が経済状況の悪化で死亡しています。
しかも、インフルエンザで亡くなる人の多くは、新型コロナウイルスと同様に高齢者が中心ですが、経済状況悪化による自殺者は生産年齢人口が中心であることを考えると、国全体に与える影響としては「より深刻」です。
つまり、新型ウイルスを封じ込めようと経済活動を制限することによって経済が悪化すると、ウイルスで死ぬ人を減らすことが出来た代償として、それ以上の人数が自殺してしまう可能性があるわけです。
今般の新型コロナウイルスによる国内の死者数が、季節性インフルエンザ並みの年間1万人ほどになるのか?、、、それに伴う経済の悪化によって自殺者数がどれほど増えるのか?、、、これを検証するには数年後を待たねばなりません。
経済的影響を見越したウイルス対策の政治的判断、これは本当に難しいと思うものです。