2021年06月08日 (火) 22:24 | 編集
先月5月29日に当院は開業20周年となり、21年目に向けて新スタートを切ったところでございます。
先週月曜日に「20年間の忘備録」として、開業当初に打ち出した方針のことを記しました。
医院の大きな柱として「歯周病治療を基軸にした歯科医院」ということを全面に出し、併せて「完全予約制」として「初診・急患随時受付ではありません」という姿勢を明確にしました。
初診時には検査の後、懇切丁寧に説明できるよう、2時間以上を確保しました。
通常の予約枠は余裕を持たせて最低でも45分枠に設定しました。
しばらくすると短期間では患者さんが回せなくなって、予約が取りづらくなってしまい「とにかく融通が効かない歯科医院」ということになりました。
当初は患者さんからの反発も多く、自分では初志貫徹をするつもりでいたものの、どこか不安になっていたのもまた事実、、、そこで開業からもうすぐ1年というタイミングでアンケートを取ることにしました。
しかしながら実は、その当時の自分はアンケートというものに懐疑的でした。
開業前の旧職場の大学やアルバイト先などでも、アンケートをとったり目安箱を置いたりしていましたが、そうすると得られる回答は殆どがが苦情や批判なわけです。
苦情や批判というのは、たしかに今まで気がつかなかったことに対する「気づき」を与えてくれることがあります。
そんな貴重な意見を得られることもあるのですが、多くの場合、皆さん現場の事情など全く気にせず書きますから、勝手気ままな意見も少なくないのです。
たしかに「ひとつの苦情の後ろには10倍の同様の苦情がある」と言われますし、そういった苦情や批判を受けて改善しようとする姿勢は大切です。
しかし、アンケートや目安箱の意見を重視するあまり、その部分を改善することの代償として、今まで続けてきた他の事、今後も続けていくべき大切な事を変えてしまうという場面に遭遇した経験が多々あったのです。
そこで、当院の方針を理解し、支持してくれる患者さんが、より当院を好きになってもらえることを目指し、アンケートは半年以上通い続けている人だけを対象に行うことにしました。
宛名に当院の住所を書いたハガキを用意し、裏に3つの質問を印刷して、そのハガキを治療が終わって帰る時に患者さんに渡しました。
患者さんには無記名で回答していただき、回答を書いたら近くのポストに投函してもらうというシステムです。
質問は、1)当院を受診して印象的だったことは何ですか?、2)今後も変えずに継続してほしい点は何ですか?、3)改善してほしい点は何ですか?、、、の3つでした。
3)の要望を受けて改善しようとすると、2)を変えなければならなくなるならば、もちろん、2)を優先させました。
具体例としては、2)予約の時間通りに待つことなく始まるのは素晴らしいです、と書いてある一方で、3)予約がなかなか取れなくて不満です、1日に診る患者数をもっと増やしてください、という場合は、3)を改善しようとすると、2)を維持できなくなりますから、2)を優先するという具合です。
このアンケート方式のおかげで、当初の方針をより強化することができました。
この成功を受けて、さらに1年後、1回目と同じ質問を書いたハガキを患者さんに渡して、アンケートを取ることにしました。
ただし、2回目は当方で患者さんを選別することなく、ランダムに大量に配布しました。
すると、回収率は悪くなり、回答内容も、まぁぶっちゃけて言うと「勝手なことばかり書いてるな〜」という結果になってしまいました。
アンケート結果を分析しても「果たして私たちは何をどうすれば良いのだろう?」と、何も先が見通せなくなってしまったのです。
そこで、翌年の3回目のアンケートでは、再び「今後もずっと通い続けてほしい患者さんだけ」にハガキを渡すようにしました。
この開業当初に行った3回のアンケートで分かったこと、、、それは、「対象者を選ばないアンケートや目安箱は、かえって混乱する場合がある」ということです。
どんなことがあっても「ここは絶対に変えない」という、しっかりとした幹のようなものが確立している組織ならば、目安箱も良いのかもしれませんが、やはり誰が書いたかわからない苦情や批判を黙殺するのは勇気が要ります。
ならば、あまりお店に来てほしくない問題のあるお客さんにアンケートを渡すことはせず、ずっと通ってくれて美味しく食べてくれている常連さんを中心にアンケートを渡した方が、より明確な今後の方針が見えてくるというものです。
そういえば、旧職場にいた時に、学生さんを対象にした実習のカリキュラムが終了した時に、最後に全員にアンケートを書いてもらったことがあったんですが、まぁ無記名だけあって、ここぞとばかりに好き勝手なことを色々と書いてくれるんですよ。
もちろんそれを読んでいる分には面白いんですが、じゃぁそのアンケートを元に「次年度はどう改善していくか?」となると、全く見えないというね、、、アンケート結果を盲信してどんどん変えていったらそれは危険ですし、、、やはり改善要望を訊くときは「今後も変えずに継続してほしい部分」も同時に訊くことが肝要ですね。